ちいさな世界 第2話
どこか、とにかく遠い世界 〜 僕
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次に覚えている記憶は
二人組のアイドルグループが解散する?
のをテレビで見ている時のことだった。
それがだれだったか、までは覚えていない。
テレビの中の世界は、自分の世界とは別のもの。だと思っていた。
日本ではない、どこか、とにかく遠い世界。
たまに連れて行ってもらえる「街」という世界とも違う、
とても華やかなものだった。
そのときの僕にあった日常の世界は、山々に囲まれた刑務所官舎。隣接する一軒家数軒。
ブランコとシーソー。小さな売店。鯉の泳ぐ池。大きな坂。
それで全部だったし、その世界で自由に動ける場所は、さらに少ないものだった。
その華やかさは僕の日常のどこにもなかった。
王子様もお姫様も、日常にはいない。
小さい体の僕は、目の前にあるテレビというものの、
ダイヤルというものをガチャガチャ回すことで映る
「僕の世界」からとても遠い世界の映像を、
ただただ意味もなく眺めていた。